私たち人間の生活に欠かせない「食事」。
食事は人の生命活動を維持する上でもっとも重要な項目であり、食べ物をしっかり噛んで食べる為には「歯」が必要となります。
しかしながら、日本人の「歯の健康寿命」は平均寿命の年齢に追いついていない状態です。
つまり「平均寿命よりも早くすべての歯を失ってしまう人が多い」のです。
では、歯を失ってしまう原因とはいったい何なのでしょうか？
そして、歯を失う事は全身の健康とどのような関係があるのでしょうか？
今回は「歯と健康の関係」についてお話をさせていただきます。
目次
「虫歯」と「歯周病」は歯を失う2大原因
人が歯を失ってしまう原因、それは「虫歯」と「歯周病」です。
この2つのうち、特に歯周病は歯を失う最大の原因になっています。
歯周病は高齢の人ほど歯を失いやすく、現在の日本では80歳の人に残っている歯の数は平均で「13.9本」、80歳の時点で20本以上歯が残っている人は全体の「38.3%」という調査結果が出ています。
（平成23年実施の歯科疾患の実態調査結果）
平均寿命が年々延びている中で20本以上歯が残っている人が4割に満たない日本では、「歯の健康寿命」を延ばす事が重要な課題となっています。
成人の約8割が歯周病です
高齢の人に多いというイメージが強い歯周病ですが、歯周病はけっして「高齢者だけの病気」ではありません。
実は、歯周病は「5歳から75歳まで」のほぼすべての年齢層の人がかかっている病気の一つであり、歯ぐきの炎症などの歯周病をわずらっている人がもっとも多いのは55歳から64歳の世代で、この世代の「84.6%」の人が歯周病にかかっているというデータがあります。
また、5歳から14歳の若年層の世代では33.4%、15歳から24歳の世代では70.3%の人が歯ぐきの炎症が認められ、全体では成人の約8割が歯周病にかかっている事が明らかになっています。
歯周病は全身の健康に悪影響をおよぼします
近年では、歯周病はお口の中だけではなく、全身の健康に悪影響をおよぼす事が徐々に分かってきました。
その中でも特に歯周病と深い関係にあるとされているのが、「メタボリックシンドローム」や「糖尿病」といった成人病です。
歯周病と成人病の関係を調べた研究結果では、
①歯周病を発症すると噛む力が衰えてしまい、肥満になりやすい
②歯周病を引き起こす歯周病菌が血管の中に入り込み、血糖値をコントロールしているインスリンの働きを阻害して糖尿病を悪化させてしまう
③肥満の人は歯周病になりやすく、歯周病にかかる事でさらに全身の健康に害をおよぼして健康状態を悪化させてしまう
といった事が判明しつつあります。
また、歯周病は成人病以外にも「骨そしょう症」や「肺炎」、心筋梗塞や脳梗塞などの「動脈疾患」、さらには「低体重児出産」にも深い関係があると指摘されています。
歯周病は「サイレント・キラー」
お口の中だけではなく全身の健康に害をおよぼす事が分かりつつある歯周病ですが、歯周病でおそろしいのは「症状が出ても気づきにくい」という点です。
歯周病は「サイレント・キラー」とあだ名されるほど、各症状を自覚しにくい病気でもあります。
特に初期の歯肉炎の段階は症状に気づきにくく、歯周病を放置した結果どんどん症状が進んでゆき、気がついた時には歯がグラグラになっていた、または歯が自然と抜け落ちてしまった、というケースも珍しくありません。
歯周病・虫歯の予防に欠かせない「プラークコントロール」
歯周病や虫歯を未然に防ぐ為には、歯ブラシを使った毎日の「プラークコントロール」が欠かせません。
プラークとは歯の表面に付着している歯垢であり、プラークの中には虫歯の元となるミュータンス菌のほか、歯周病を引き起こす歯周病菌などの細菌がひそんでいます。
これら歯周病や虫歯の原因菌を毎日のブラッシングで清掃して除去する事で、歯周病や虫歯を発症する確率を下げる事が出来ます。
歯周病や虫歯を防ぐ事が全身の健康につながります
虫歯や歯周病とも関係が深い肥満、糖尿病などの病気を予防・改善する為には、
・栄養バランスが整っている食事を取るように心がける
・食事はよく噛んで食べる
・就寝前は特に丁寧に歯を磨くようにする
等の生活習慣を日々実践する事が大切です。
さらに、これに加えて
・歯科医院で定期検診を受ける
・歯石取りや歯のクリーニングで歯を綺麗にする
等の「歯科医院でのプロケア」を受ける事で歯周病や虫歯を防ぎ、全身の健康を改善・促進する効果を期待出来ます。
生活習慣を改善して歯と全身の健康寿命を延ばしましょう
歯と健康は切っても切り離せない関係にあります。
「歯は健康の原点」です。
超高齢化社会に突入した日本のこれからの目標は、単に数字上の平均寿命を延ばすだけではなく、生き生きと生活出来る「健康寿命」を延ばす事が重要です。
歯周病や虫歯を予防して歯を健康に保ち、ご高齢となっても食べ物をしっかりと噛めるよう「歯の寿命」も延ばす事が全身の健康につながります。
毎日のブラッシングを欠かさずにきちんと行い、そして歯科医院での定期的なプロケアを受け、歯と全身の健康寿命を延ばしてゆきましょう。
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